日本の誕生石は2021年に63年ぶりに改訂されました。改めて誕生月ごとに簡単にまとめてみました。以前誕生石の起源について触れましたので、そちらもご参照ください。

January 1月

Garnet(ガーネット)和名:柘榴石(ザクロ石)宝石言葉:友愛・忠実・貞節・真実・生命力

ガーネットはカラーバリエーションが大変豊富で魅力的な石です。紫がかった赤が特徴のものはロードライトガーネット、燃えるようなオレンジのスペサルタイトガーネット(別名マンダリンガーネット)などがあります。グリーンガーネットにTiffany社が命名したツァボライトと、強い分散光が見えるデマントイドがあります。これらは化学組成の近い鉱物ガーネットグループの中のそれぞれ別の鉱物です。

February 2月 

Amethyst(アメジスト)和名:紫水晶 宝石言葉:誠実・心の平和・決断・調和・高貴
Chrysoberyl Cat’s Eye(クリソベリルキャッツアイ)和名:猫目石 宝石言葉:守護 慈愛 驚嘆の美

アメジストは、クォーツの中でも紫色の水晶のことをいいます。歴史も古く身近に感じられる宝石の一つであり、日本では1千年ほど前には水晶を採掘していました。特に江戸時代以降に山梨県で上質な水晶が採掘され、日本の国の宝石は真珠ではなく水晶とされる説があります。古代ギリシャではお酒に酔わないお守りとされてきました。今人気のアメトリンは、アメジストとシトリン(黄色い水晶)がひとつの結晶にあるものをいいます。

クリソベリルキャッツアイは2021年に誕生石に追加されました。宝石に詳しい愛好家の間で希少な宝石として高い人気で、メンズリングなどにも好まれます。光を当てると縦に一条の線が出るシャトヤンシー効果(キャッツアイ効果)は、内部に平行に存在するシルクのようなインクルージョンが光を反射して出現します。以前にスリランカの宝石ディーラーから「これがHaney colorだ」というトップランクの色、また光の筋のシャープさなど見せてもらう機会がありました。まるで絹のように動く光の筋と質感がとても美しいものです。

March 3月

Aquamarine(アクアマリン)和名:藍玉(らんぎょく) 宝石言葉:沈着・勇敢・聡明・若さ
Coral(コーラル)和名:珊瑚(さんご) 宝石言葉:幸福・威厳・長寿・成長
Bloodstone(ブラッドストーン)和名:血石(けっせき)宝石言葉:勇気・勇敢・聡明・生きる力
Iolite(アイオライト)和名:菫青石(きんせいせき) 宝石言葉:誠実・貞操・徳望・指針・先導

アクアマリンは瑞々しい色で、語源はラテン語で水を意味するAqua(アクア)と海を意味するMarine(マリーン)からきています。アクアマリンは採掘された時にすでに綺麗なブルーのものはそのまま研磨されますが、淡い色や茶色がかったものは加熱によって綺麗なブルーに変化させます。これは後戻りすることはなく、内部の変化を見ることはできません。地球がやり残した作業を地上で人の手が代わって仕上げているというわけです。透明でステップカットに施されたアクアマリンは凛とした印象で魅力的ですが、ミルキーアクアという半透明な素材でカボションカットにされた円やかな印象のアクアマリンもまた魅力的です。

コーラルは海で生息する有機質の宝石で、真珠と違うのは養殖が出来ないという点。コーラルの色は赤さんご、もも、ピンクコーラル(和名:ボケ、英名:エンジェルスキン)、白珊瑚があります。エンジェルスキンという名前はとても少女らしいイメージですね。

ブラッドストーンはジャスパーの仲間で、濃緑色の半透明石で赤い斑点があります。よく見かける丸い珠や連以外に、イギリスなどのアンティークジュエリーに時折見かける印章のジュエリーなどは趣があります。石の価値というよりは作品の価値を感じさせるものに出会った時など興味深く感じる石です。

アイオライトの名前は紫を意味するギリシャ語のIosに由来します。透明石で水を湛えたような印象から、古くからウォーターサファイアと呼ばれています。サファイアの青よりもバイオレットを少しかんでいて、透明度が高く多色性(見る角度によって異なった色が見える性質)が強い宝石です。結婚21周年を記念する宝石でもあります。

April 4月

Diamond(ダイヤモンド)和名:金剛石 宝石言葉:永遠・純潔・永久不変・不屈
Morganite(モルガナイト)和名:モルガン石 宝石言葉:愛情・清純・優美・謙虚・自立

ダイヤモンドはKING OF GEM. どんな宝石よりも硬くて輝いて「征服されざるもの」という意味のギリシャ語Adamas(アダマス)が名前の由来です。無色以外にピンクやオレンジ、グリーンなど可愛くて魅力的な色相なものまで様々です。透明度によって宝石品質、低品質のニアジェム(本来は工業用)工業用品質に分けられます。スライスダイヤモンド、アンカットダイヤモンドなどプリミティブで個性豊かなものを目にすることが増えました。

4月誕生石に新たにモルガナイトが加わりました。淡いピンクの透明度の高い石で、エメラルドに代表されるベリルの仲間です。アメリカの銀行家で宝石収集家のジョン・モルガンにちなんで名づけられました。優しく淡いピンクが特徴で、ブラジル、ミナスジェライス州などで採掘され、大きな結晶もあります。

May 5月

Emerald(エメラルド)和名:翠玉(すいぎょく)宝石言葉:幸運・幸福・明晰・満足

エメラルドは、アクアマリンと同じベリルという鉱物種のうち緑色のものをいいます。古代ローマでは、エメラルドのことをsmaragdi(スマラグディ)とよんで、帝政ローマの小プリニウスの「Natural History(博物誌)」 (紀元79年ごろ)などの書物にも登場しています。内包物の無いエメラルドを探すのは不可能で、石を覗くと固体、気体、液体など様々なインクルージョンを見ることができ、フランス語で庭園という意味のJardin(ジャルダン)と表現します。コロンビア産、ブラジル産など産地による色味に特徴があり、石の買い付けのプロはエメラルドを一目見ると産地がわかるといいます。オイルや樹脂による含侵処理で本来目立つ傷を目立たなくトリートメントすることが一般的ですが、元々傷の少ない美しいエメラルドは大変希少ゆえ、大切にしたい地球の宝物です。

June 6月

Pearl(パール)和名:真珠 宝石言葉:健康・長寿・富・無邪気・純潔・純粋無垢
Moonstone(ムーンストーン)和名:月長石(げっちょうせき) 宝石言葉:幸福・健康・長寿・富
Alexandrite(アレキサンドライト)和名:金緑石(きんりょくせき) 宝石言葉:高貴・誕生・光栄

パールは虹色に輝く光彩が珠の中に映り込み、どのような人種の肌色も高貴に美しく見せることのできる最高の宝石です。フェルメールの絵画「真珠の耳飾りの少女」は、実際にそこで呼吸しているような少女は、真珠によってリアリティを引き立てられていると思いました。古代ギリシャでは、真珠は愛の女神アフロディテの象徴でもありました。磨かないと光らない他の宝石と違い、貝を開いた瞬間から光り輝いて存在します。天然真珠は非常にまれであり、養殖でなければ真珠を見つけ出すのは至難の業です。

ムーンストーンは月の光を思わせる、ブルーを少しかんだ乳白色の石です。カボションカットに施された宝石品質のものは美しいオーロラのような幻想的なシラー(内部の層状構造によって光の反射と錯乱が発生し、石の表面にブルーやホワイトなどの強い光が現れる)効果が見られます。

アレキサンドライトは新たに加わった誕生石で、光源によって色がグリーンと赤に変化します。
1830年にロシア帝国のウラル山脈にて、エメラルド鉱山から発見され、当時のロシアの次期皇帝アレクサンドル2世が名前の由来となりました。自然光の下では青紫色に輝き、ろうそくや蛍光灯などの人工光の下ではワインレッドへと色が変化する不思議な宝石です。アレキサンドライトは鉱物クリソベリルに属する宝石で、カラーチェンジするものをアレキサンドライト、キャッツアイ効果を見せるものをキャッツアイと呼んでいます。

July 7月

Ruby(ルビー)和名:紅玉 宝石言葉:熱情・仁愛・純愛 ・威厳・優雅・勇気

ルビーは赤い宝石の代表格、伝統的なアジアの宝石。産地として有名かつ歴史が古いのはミャンマー(ビルマ)のモゴック地方の鉱山。採掘地での戦争や政治によって宝石の流通も影響を受けます。ルビーは元々持っている色を更に引き出すために、昔から加熱処理が行われてきました。中には稀に非加熱のままでも美しいルビーが採れることもあり、愛好家たちの間で注目が集まり大変高価になります。

August 8月

Peridot(ペリドット)和名:橄欖石(かんらんせき) 宝石言葉:夫婦の幸福・和合
Sardonyx(サードオニックス)和名:紅縞瑪瑙(べにしまめのう) 宝石言葉:知恵・勝利・幸福
Spinel(スピネル)和名:尖晶石(せんしょうせき)宝石言葉:成功・情熱・好奇心・挑戦

ペリドットは黄緑色の宝石ですが、原石は平和の象徴でもあるオリーブの実に近い緑で産出することから、鉱物種名はオリビン(語源はラテン語のオリーブ)です。劈開といってある方向にパッと開くように割れる性質がややあるので、リングで持つならファセットカットされたものよりも、カボションカットのつるんとした石の方がおすすめです。

サードオニックスの主な産地はアメリカ、ブラジル、ウルグアイ、インド、中国、ドイツなど。
「紅縞瑪瑙(べにしまめのう)」と呼ばれる通り、夏の夕日を思わせる赤色~朱色・褐色をベースに白色の縞模様が艶やかな美しい石で「サードニクス」「サードオニキス」「サードニックス」とも表記されます。また、熱いワックスが付着しないことから、古来より紋章・印章・シグネットリングなどにするのに使われ、層によって様々に現れる縞模様の美しさがカメオ彫刻の材料としても重宝されます。

スピネルは2021年に追加され、今注目の石です。ダイヤモンドの結晶と同じ八面体の結晶で産出されることがあります。これが小さなトゲを思わせることから、ラテン語のトゲを意味するSpina(スピナ)が語源になっています。スピネルは実に様々な色を産出し、オレンジ・レッド・パープル・ブルー・グリーン、黒や無色などがあります。特にレッドスピネルは歴史的に長い間ルビーと区別されなかった赤い宝石。イギリス王家が所有する黒太子のルビーは、140ctの巨大なスピネルです。エリザベス女王の国葬の際に棺の上に置かれた大英帝国王冠に、ダイヤモンドカリナンⅡの上に据えられています。

September 9月

Sapphire(サファイア)和名:蒼玉(せいぎょく) 宝石言葉:成功・誠実・慈愛
Kunzite(クンツァイト)和名:リチア輝石(りちあきせき) 宝石言葉:無償の愛・可憐・純粋

サファイアは、青を意味するラテン語の「サッピールス(sapphirus)」に由来します。サファイアには青以外に豊富なカラーバリエーションがありますが、古い時代に青い石全般を指していたような記述も残されています。歴史上の王族や君主の冠や指輪などを飾ってきたことも多く、王室とゆかりのある宝石です。

クンツァイトは、1902年にカリフォルニア州で発見された淡い紫からスミレ色の宝石です。Tiffanyの鉱物学者で宝石鑑定士のジョージ・フレデリック・クンツ博士が、鉱物スポジュメンの変種であることを最初に鑑別し、博士の名にちなんでクンツァイトと命名されました。鉱山のある地名に因んでカリフォルニア・アイリスという愛称もあります。

October 10月

Opal(オパール)和名:蛋白石(たんぱくせき) 宝石言葉:幸運・歓喜・希望・無邪気
Tourmaline(トルマリン)和名:電気石 宝石言葉:希望・友情・潔白

オパールは、貴石を意味するラテン語のオパルス(Opalus)に由来します。オパールは、遊色効果と呼ばれる、虹色にユニークに輝く現象で知られています。 オパールは大まかに2つのクラス、貴重なものと一般的なものに分類されます。 貴重なオパールは遊色効果を発するプレシャスオパールといい、発しない一般オ​​パール(コモンオパール)といいます。

トルマリンの名前の由来はスリランカの言葉で、宝石の砂礫を意味するトルマリ(Turmali)からきています。結晶に含まれる元素の微妙な違いにより、多彩な色が産出します。一つの結晶にピンクとグリーンなど2色以上が見られるバイカラートルマリン、スイカの輪切りのように見えるウォーターメロントルマリンなどもあります。自然が生み出したユニークな宝石です。

November 11月

Topaz(トパーズ)和名:黄玉 宝石言葉:成功・希望・誠実・友情
Citrine(シトリン)和名:黄水晶 宝石言葉:繁栄・成功・富・幸福・希望

トパーズはカラーレス、ブルーなどいろんな色が産出しますが、中でもピンク系が希少です。シェリー酒のような色合いのオレンジがかったインペリアルトパーズや、淡い赤紫のような色あいで、ファンシーピンクダイヤモンドに似た色をしているピンクトパーズがあります。

シトリンの語源はフランス語でレモンを表すシトロン(Citron)です。水晶系の宝石で天然のままで黄色いものは産出が限られていて、特定の鉱床のアメジストを加熱して鮮やかな黄色に変化させています。一旦変化した色は元に戻ることはありません。この宝石も地球がやり残した作業を地上で人の手が代わって仕上げているというわけです。

December 12月

Turquois(トルコ石)和名:トルコ石 宝石言葉:成功・繁栄・健康・幸福・旅の安全
Lapis Lazuli(ラピスラズリ)和名:青金石・瑠璃 宝石言葉:成功の保証・真実・健康・幸運
Tanzanite(タンザナイト)和名:灰簾石(かいれんせき) 宝石言葉:神秘・冷静・誇り高い
Zircon(ジルコン)和名:風信子石(ひやしんすせき) 宝石言葉:穏やかな人間関係・平和

トルコ石は、地球上でわずかな場所にしか見られません。どのような場所で採掘されるかというと乾燥した不毛の地域です。今も昔もイランのペルシャ産のトルコ石は美しいターコイズブルーのジェムクオリティのものがあり、大切にされてきました。米国・ネバダ州、アリゾナ州、ニューメキシコ州などのアメリカ先住民によって1000年近く採掘されてきました。トルコ石と呼ばれる前は、美しい石という意味のカレースと呼ばれていました。

ラピスラズリは、アフガニスタンの山脈などから産出する、鮮やかなロイヤルブルーが目を引く岩石です。メソポタミア、エジプト、中国、ギリシャ、ローマの古代文明で装身具として珍重されました。

タンザナイトは、タンザニアで発見されたゾイサイトという鉱物種で、Tiffany社によってタンザナイトと命名されました。茶色いゾイサイトを加熱すると青いタンザナイトになります。

ジルコンは、アラビア語の朱色を意味するジャグーン(Jargon)が語源になっています。様々な色が産出しますがブラウンでの産出が多いからだったのでしょうか。また、キュービックジルコニアが普及するまでは、ダイヤモンドの代替品として注目されていた宝石です。無色のジルコンはブリリアントカットにすると、高い屈折率のためファセットの稜線が二重に見えるのでダイヤモンドと区別が簡単です。